蒸気ボイラーの事故で最も怖いのは低水位です。 水がなくなれば伝熱面が空だきになり、過熱して膨れ、最悪は破裂します。 だから「水位を正しく知る」ための装置には、構造にも取扱いにも厳しい決まりが置かれています。

安全低水面という基準

まず用語を固めます。

安全低水面 = 蒸気ボイラーの使用中、維持しなければならない最低の水面(構造規格69条2項)

これは「ここまで下がってもよい線」ではなく、「ここより下げてはいけない線」です。 そして構造規格は、水位計の基準点をこの線に合わせるよう求めています。

装置 安全低水面との関係
ガラス水面計 ガラス管の最下部が安全低水面を指示する位置に取り付ける(69条2項)
験水コック 最下位のものを安全低水面の位置に取り付ける(72条2項)

**「いちばん下=安全低水面」**で両方そろいます。 運転中に水面計のガラス管の中に水が見えていれば安全低水面より上、という関係になります。

ガラス水面計の決まり(構造規格69条)

決まり 内容
個数 蒸気ボイラーには2個以上(多管式貫流ボイラーは1個以上)
対象外 貫流ボイラー(多管式貫流ボイラーを除く)には不要
1個を他の装置に代えられる場合 胴の内径が750mm以下の蒸気ボイラー ② 遠隔指示水面測定装置を2個取り付けた蒸気ボイラー
取付位置 ガラス管の最下部が安全低水面を指示する位置
構造 随時、掃除および点検ができる構造にする

2個要求されるのは、1個が詰まって嘘の水位を示したときに気づけるようにするためです。 2組の水面計の水位が食い違っていたら、どちらかが詰まっていると分かります。 この考え方が、次の機能試験のタイミングにそのままつながります。

験水コック(構造規格72条)

ガラス水面計でない水面測定装置として験水コックを使うときの決まりです。

決まり 内容
個数 ガラス水面計のガラス管取付位置と同等の高さの範囲3個以上
例外 胴の内径が750mm以下で、かつ伝熱面積が10m²未満の蒸気ボイラーは2個でよい
最下位のもの 安全低水面の位置に取り付ける
連絡管 容易に閉そくしない構造にする

験水コックは、コックを開いて蒸気が出るか水が出るかで水位を判断する装置です。 水が出ればその高さより水位は上、蒸気が出ればその高さより水位は下、という単純な原理です。

なお、鋳鉄製ボイラーでは験水コックは2個以上とされています(構造規格97条3項)。 鋼製の3個以上と混ざりやすいので、「鋳鉄は2個」と別枠で覚えておきます。

水柱管と連絡管(構造規格70条・71条)

水面計を胴に直付けせず、水柱管を介して取り付けることがあります。 このとき連絡管の取り回しに決まりがあります。

決まり 理由
最高使用圧力1.6MPaを超えるボイラーの水柱管は鋳鉄製にしてはならない 高圧に耐えられない
水柱管は容易に閉そくしない構造にする 詰まると水位が動かなくなる
水側連絡管は、途中に中高または中低のない構造とする 高い所があると蒸気がたまり、低い所があるとスラッジがたまって、どちらも水の行き来を妨げる
水側連絡管の取付口は、水面計で見ることができる最低水位より上であってはならない 上にあると、水位が下がったとき通路が水面から出て測れなくなる
蒸気側連絡管は、途中にドレンのたまる部分がない構造とする ドレンがたまると蒸気圧が正しく伝わらない
蒸気側連絡管の取付口は、水面計で見ることができる最高水位より下であってはならない 下にあると水につかり、蒸気側の通路として働かない

覚え方のコツ

「水側は低く、蒸気側は高く」です。 水の通り道は最低水位よりに、蒸気の通り道は最高水位よりにつながっていなければ、 どんな水位でも正しく伝わりません。条文は「〜より上であってはならない」「〜より下であってはならない」 という否定形なので、読み間違えないよう、先に図式を頭に置いてから条文を読むと確実です。

機能試験(吹き抜き)の目的と考え方

ボイラー取扱作業主任者の職務として、法令にはっきり書かれています。

一日に一回以上、水面測定装置の機能を点検すること(ボイラー則25条1項5号)

ただし例外があります。ボイラーの運転の状態に異常があったときに安全に停止させる機能などを持つ 自動制御装置を備え、所轄労働基準監督署長の認定を受けたボイラーでは、 この点検を三日に一回以上とすることができます(同条2項)。

**「原則1日1回以上、認定ボイラーは3日に1回以上」**が数字の押さえどころです。

何を確かめているのか

機能試験は、水面計に見えている水位が本物かどうかを確かめる作業です。 確かめるべきことは2つだけです。

  1. 水側の通路が詰まっていないか
  2. 蒸気側の通路が詰まっていないか

そのために、ドレンコックを開いた状態で、水側だけ・蒸気側だけを順に単独で吹き出させ、 それぞれから勢いよく吹き出すことを確認します。 最後にドレンコックを閉じたとき、ガラス管の中の水位が素早く元の高さに戻れば正常です。

戻りが遅い、あるいは水位がまったく動かないなら、どこかが詰まっていると考えます。 詰まった水面計は、水位が下がっても見かけ上は水があるように見えるため、 もっとも危険な故障の仕方をします。ここが機能試験の本質です。

機能試験を行うべきタイミング

1日1回以上という法令の下限に加え、次の場面ではその都度確かめます。

場面 理由
ボイラーをたき始め、圧力が上がり始めたとき 冷態から立ち上げた直後は通路にごみやドレンが残りやすい
2組の水面計の水位に差があるとき どちらかが詰まっている可能性が高い
水位の動きが鈍いとき 通路の詰まりの典型的な前兆
取扱い担当者が交替したとき 引き継いだ人が自分の目で正常を確認する
ガラス管を取り替えたとき 組み付けの不良で通路がふさがっていないか確かめる
プライミング・ホーミングが生じたとき 水位が正しく読めなくなっている

水位が正しく見えなくなる原因

症状 考えられる原因
水位が動かない 水側または蒸気側の連絡管・コックの詰まり
水位が実際より高く見える 水側が詰まり、ガラス管内に古い水が残っている
水位が激しく上下する プライミング(水気立ち) や急激な負荷変動
水面が泡立って境目が読めない ホーミング(泡立ち)。ボイラー水中の不純物や油分が原因
ガラス管が汚れて読めない スケール・スラッジの付着。随時掃除できる構造が求められる理由

なお、附属品の管理として、蒸気ボイラーの常用水位は、ガラス水面計またはこれに接近した位置に、 現在水位と比較できるように表示しなければなりません(ボイラー則28条1項6号)。 また、燃焼ガスに触れる水面測定装置の連絡管は、耐熱材料で防護します(同7号)。 ボイラー室には、水面計のガラス管やガスケットなどの予備品と修繕用工具類を備えておく必要もあります(同29条1項3号)。

まとめ

  1. 安全低水面は「これより下げてはいけない線」。ガラス管の最下部、験水コックの最下位が合わせ先
  2. ガラス水面計は2個以上(多管式貫流は1個以上、貫流は不要)
  3. 験水コックは3個以上、小径・小伝熱面積なら2個、鋳鉄製は2個以上
  4. 連絡管は「水側は最低水位より下、蒸気側は最高水位より上
  5. 機能試験は1日1回以上(認定ボイラーは3日に1回以上)。目的は通路の詰まりの発見