伝熱面積は、ボイラーの大きさを表す法令上のものさしです。 「ボイラーかどうか」「ボイラー室が要るか」「どの級の作業主任者を選ぶか」が、すべてこの数字で決まります。 計算そのものより、何を面積に数え、何を数えないかの考え方が試験で問われます。
伝熱面積とは何を数えているか
算定方法はボイラー及び圧力容器安全規則2条が定めています。 出発点は、水管ボイラーと電気ボイラー以外のボイラー(つまり丸ボイラー)の定義です。
火気、燃焼ガスその他の高温ガス(燃焼ガス等)に触れる本体の面で、 その裏面が水又は熱媒に触れるものの面積(ボイラー則2条1号)
つまり、片側が燃焼ガス、その裏側が水になっている面だけを数えます。 言い換えれば「熱が本当に水へ渡っていく面」だけが伝熱面積です。
この一文から、よくある誤りが自動的に消えます。
- 燃焼ガスに触れていても、裏が水でない面(外壁、れんが積みの外側)は数えない
- 水に触れていても、燃焼ガスに触れていない面は数えない
- 面積は燃焼ガス側の面で測る。水側で測るのではない
種類ごとの算定方法
| 区分 | 算定するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 水管ボイラー・電気ボイラー以外(丸ボイラーなど) | 燃焼ガス等に触れる本体の面で、裏面が水または熱媒に触れるものの面積 | 2条1号 |
| 貫流ボイラー以外の水管ボイラー | 水管および管寄せについて、燃焼ガス等に触れる面の面積を合計した面積 | 2条2号 |
| 貫流ボイラー | 燃焼室入口から過熱器入口までの水管の、燃焼ガス等に触れる面の面積 | 2条3号 |
| 電気ボイラー | 電力設備容量60kWを1m²とみなして、最大電力設備容量を換算した面積 | 2条4号 |
貫流ボイラーは「どこからどこまで」が決まっている点が特徴です。 貫流ボイラーの中を水は一方通行で流れ、予熱部・蒸発部・過熱部に分かれます。 伝熱面積に数えるのは、そのうち燃焼室入口から過熱器入口までであり、過熱器そのものは含みません。
電気ボイラーだけは、面積ではなく電力から換算します。 燃焼ガスがそもそも存在しないので、面で測りようがないからです。
ひれ・スタッド付き水管の考え方
水管ボイラーの水管に、伝熱を増やすためのひれ(フィン)やスタッドが付いている場合、 その分も一定の割合で加算します(2条2号ロ〜チ)。数値は複数の区分に分かれていますが、 考え方は共通です。
- 両面が燃焼ガスに触れるひれと片面だけ触れるひれでは、加える面積が違う
- 耐火れんがで覆われた水管は、直接ガスに触れていないので、 管の外側の壁面に対する投影面積として数える
- 円周方向・スパイラル状のひれは、ひれの片面の面積の**20%**を管の外周の面積に加える
- 燃焼ガス等に触れるスタッドチューブは、スタッドの側面の面積の**15%**を管の外周の面積に加える
二級では細かい係数まで問われることは少なく、 「覆われていれば投影面積、露出していれば実面積の一部を加算する」という考え方を押さえれば十分です。
伝熱面積が効いてくる3つの場面
ここからが本番です。伝熱面積は、次の3か所で使われます。
1. そもそも「ボイラー」かどうか
労働安全衛生法施行令1条3号は、蒸気ボイラー・温水ボイラーのうち、 一定の小さなものをボイラーから除いています(いわゆる簡易ボイラー)。 その境目の多くが伝熱面積です。
| 除かれるものの例(令1条3号) | 条件 |
|---|---|
| イ | ゲージ圧力0.1MPa以下の蒸気ボイラーで、伝熱面積が0.5m²以下のもの(または胴の内径200mm以下かつ長さ400mm以下のもの) |
| ハ | 伝熱面積が2m²以下の蒸気ボイラーで、大気に開放した内径25mm以上の蒸気管を取り付けたものなど |
| ニ | ゲージ圧力0.1MPa以下の温水ボイラーで、伝熱面積が4m²以下のもの |
| ヘ | ゲージ圧力1MPa以下で使用する貫流ボイラーで、伝熱面積が5m²以下のもの |
さらに、ボイラーのうち一定のものが小型ボイラーとされます(令1条4号)。 蒸気ボイラーなら伝熱面積1m²以下、温水ボイラーなら圧力0.1MPa以下で8m²以下、 貫流ボイラーなら圧力1MPa以下で10m²以下、といった区分です。
圧力と伝熱面積の組合せで決まるのがポイントで、 どちらか一方だけを見て判断することはできません。
2. ボイラー室が必要かどうか
移動式ボイラー・屋外式ボイラーを除き、ボイラーは専用の建物または建物の中の障壁で区画された場所 (ボイラー室)に設置しなければならない。ただし、伝熱面積が3m²以下のボイラーはこの限りでない(ボイラー則18条)
3m²以下ならボイラー室は不要です。この数字は法令科目で繰り返し問われます。
3. ボイラー取扱作業主任者の級
いちばん出題される使い道がこれです(ボイラー則24条1項)。
| 取り扱うボイラーの伝熱面積の合計 | 選任できる者 |
|---|---|
| 500m²以上(貫流ボイラーのみを取り扱う場合を除く) | 特級ボイラー技士 |
| 25m²以上500m²未満(貫流のみで合計500m²以上の場合を含む) | 特級または一級ボイラー技士 |
| 25m²未満 | 特級・一級・二級ボイラー技士 |
| 令20条5号イ〜ニの小規模ボイラーのみ | 上記に加え、ボイラー取扱技能講習修了者 |
そして、この「合計」を出すときの換算ルールが別に置かれています(同条2項)。
| 対象 | 換算 |
|---|---|
| 貫流ボイラー | 伝熱面積に10分の1を乗じる |
| 火気以外の高温ガスを加熱に利用するボイラー(廃熱ボイラーなど) | 伝熱面積に2分の1を乗じる |
| 令20条5号イ〜ニの小規模ボイラー | 算入しない |
| 厚生労働大臣が定める自動制御装置を備えたボイラー | そのうち最大の伝熱面積のものを除き、算入しないことができる |
覚え方のコツ
- 換算は**「貫流は10分の1、廃熱は2分の1、小規模はゼロ」**の3点セット。分母が大きいほど「安全側で軽く見てよい」
- 級の境目は25と500。ちょうど20倍の関係と覚えると取り違えにくい
- 「貫流のみで合計500m²以上」は特級ではなく一級でよい。貫流は10分の1を掛けるので、実面積が大きくても換算後は小さくなるという理屈と整合する
- ボイラー室の3m²と、選任の25m²は別の数字。混ぜない
まとめ
- 伝熱面積は「燃焼ガス側から見て、裏が水になっている面」
- 貫流は燃焼室入口から過熱器入口まで、電気ボイラーは60kW=1m²
- 使いどころは「ボイラーか/ボイラー室が要るか/どの級の作業主任者か」の3つ
- 作業主任者の合計では貫流10分の1・廃熱2分の1・小規模は不算入