ボイラーの障害の多くは、水の中に混ざっているものが原因です。 水は蒸気になって出ていきますが、溶けていた不純物はボイラーの中に残るからです。 運転を続けるほど中の水は濃くなり、やがてスケールになり、腐食を起こし、蒸気に混ざって出ていきます。 この「濃くなっていく」という一点が、水管理のすべての出発点です。

なぜ水を管理するのか

不純物 起こる障害
硬度成分(カルシウム・マグネシウム) スケール(硬い付着物)、スラッジ(軟らかい沈殿物)
溶存酸素、遊離炭酸、低いpH 腐食(ピッチング、グルービング、全面腐食)
溶解している塩類、油分、有機物 キャリオーバ(プライミング・ホーミング)、ホーミングによる水位の読み違い
シリカ 硬く、熱を通しにくいシリカスケール

スケールとスラッジ

スケールは、伝熱面に硬く固着した付着物です。 硬度成分が加熱で溶けきれなくなって析出したものが中心になります。

スケールがもたらす害は、次の順に連鎖します。

  1. スケールは金属よりはるかに熱を伝えにくい
  2. 燃焼ガスの熱が水へ逃げていかなくなる
  3. 伝熱面の金属そのものの温度が上がる(過熱)
  4. 高温になった金属は強度が下がる
  5. 内部の圧力に負けてふくれる(膨出)、または引き裂かれる(破裂)
  6. 同時に、熱が水へ伝わらないのでボイラー効率も下がる

**「スケール=断熱材を伝熱面に貼る行為」**と理解すれば、 過熱・膨出・効率低下という3つの害がひとつながりで出てきます。

一方スラッジは、伝熱面に固着せず底に沈む軟らかい泥状のものです。 固着しないぶん害は小さいものの、たまれば吹出し管を詰まらせ、 底部の水の流れを妨げて局部的な過熱を招きます。 だから間欠吹出し(底部ブロー)で抜くのです。

腐食

種類 現れ方 主な原因
ピッチング(孔食) 点状に深く穴があく 溶存酸素。酸素が局部電池をつくり、一点を掘り進む
グルービング(溝状腐食) 細長い溝状に進む 繰り返しの曲げ応力と腐食の組合せ。板の折り曲げ部やリベット継手のそばなど、応力が集中する場所に出やすい
全面腐食 広い面が一様にやせる **酸性(低いpH)**の水など

ボイラー水を弱アルカリ性に保つのが腐食対策の基本です。 酸性では鉄がそのまま溶け出し、逆にアルカリが強すぎると苛性脆化などの別の障害が問題になるため、 「酸性を避けつつ、アルカリにしすぎない」という両側からの管理になります。

なお、ボイラーを休止するときの保存にも2つの方法があります。

方法 内容 使い分け
満水保存法 水を満たし、薬剤でアルカリ性・低酸素に保つ 比較的短期の休止、凍結のおそれがないとき
乾燥保存法 水を全部抜いて内部を乾かし、吸湿剤を入れて密閉する 長期の休止、凍結のおそれがあるとき

**「短いなら満水、長いなら乾燥」「凍るなら乾燥」**と覚えます。

キャリオーバ — 蒸気に水が混ざる

キャリオーバは、蒸気にボイラー水(またはその成分)が混ざって出ていく現象の総称です。

種類 現象
プライミング(水気立ち) 水滴が蒸気とともに激しく飛び出す。急な負荷増加、急激な蒸気の取り出し、水位が高すぎる、などが引き金
ホーミング(泡立ち) 水面が泡で覆われる。ボイラー水中の油分・不純物・アルカリの過剰が原因

キャリオーバが起きると、

  • 水位が正しく読めなくなる(水面計の水位が乱れる、泡で境目が見えない)
  • 蒸気に含まれた不純物が過熱器や配管に付着する
  • 蒸気圧力が下がり、水位が急に下がる
  • 場合によってはウォータハンマ(水撃作用)を起こす

という害が出ます。 水管理の失敗が、そのまま水位の読み違いという安全上の問題につながるわけです。

対策は、水位を高くしすぎない急激な負荷変動を避ける主蒸気弁を急に大きく開かない、そしてボイラー水の濃度と油分を管理することです。 作業主任者の職務に「急激な負荷の変動を与えないように努めること」(ボイラー則25条1項2号)が 挙げられているのは、これが理由のひとつです。

補給水の処理

ボイラーに入れる水は、あらかじめ不純物を減らしておきます。

処理 何を除くか 方法
軟化(イオン交換) 硬度成分(カルシウム・マグネシウム) イオン交換樹脂の層に水を通し、硬度成分をナトリウムと入れ替える。樹脂が使い切られたら食塩水で再生する
脱気(物理的) 溶存酸素・遊離炭酸 加熱脱気(温度を上げると気体の溶解度が下がる)、真空脱気(圧力を下げて追い出す)、膜脱気
脱気(化学的) 残った溶存酸素 脱酸素剤を加えて酸素と反応させる
ろ過・沈降 懸濁物(濁り) ろ過器、沈降分離

軟化装置は硬度成分しか除けません。 溶存酸素も、溶けている他の塩類も残ります。 「軟化したから水管理は完了」ではない、という点が引っかけになりやすいところです。

清缶剤(ボイラー内で使う薬剤)

ボイラーの中に直接入れる薬剤を清缶剤といいます。働きは大きく4つです。

働き 目的
軟化剤(硬度成分の処理) 残った硬度成分を、固着しないスラッジに変えて吹出しで抜けるようにする
pHおよび酸消費量の調整 ボイラー水を弱アルカリ性に保ち、腐食を抑える
脱酸素剤 水に残った溶存酸素を化学的に除く
スラッジ調整剤(分散剤) スラッジを分散させて伝熱面に固着させない

**「硬度を変える・pHを保つ・酸素を消す・固まらせない」**の4つで整理します。 清缶剤は不純物を消す魔法ではなく、 害の少ない形(沈むスラッジ)に変えて、吹出しで外へ出すための道具だと理解すると、 次のブローの話とつながります。

ブロー(吹出し)が締めくくり

前処理をしても、清缶剤を入れても、不純物はボイラーの中に残り続けます。 最後にそれを外へ出す手段がブローです。

種類 どこから 目的
連続吹出し 水面近く 溶けている不純物の濃度を一定に保つ
間欠吹出し 胴・ドラムの底部 沈んだスラッジを排出する

法令も、作業主任者の職務として 「適宜、吹出しを行い、ボイラー水の濃縮を防ぐこと」(ボイラー則25条1項6号)を挙げています。

覚え方のコツ

  • 水管理の全体像は「入れる前に減らす(補給水処理)→ 中で害のない形に変える(清缶剤)→ 外へ出す(ブロー)」の3段構え
  • スケールは固着して断熱、スラッジは沈んで抜ける。だからスケールは「防ぐ」、スラッジは「抜く」
  • ピッチングは酸素、グルービングは応力。原因が違うので対策も違う
  • プライミングは水しぶき、ホーミングは泡。「プは飛ぶ、ホは泡」と語呂で分ける
  • 保存法は「短期・凍らない=満水、長期・凍る=乾燥

まとめ

  1. 蒸気は出ていくが不純物は残る。だから中の水は濃くなり続ける
  2. スケールは断熱材。過熱 → 強度低下 → 膨出・破裂、そして効率低下を招く
  3. 腐食はピッチング=溶存酸素、グルービング=繰り返しの応力、全面腐食=酸性
  4. キャリオーバは水位の読み違いにつながる安全問題。急激な負荷変動を避ける
  5. 清缶剤の働きは軟化・pH調整・脱酸素・スラッジ分散。最後はブローで外へ出す