「燃料及び燃焼に関する知識」は、覚えることが散らばって見えますが、 出題の中心は重油の性質・空気比・バーナ・通風の4本柱です。 この4つを順につないでいくと、燃料がタンクから炎になるまでの流れがそのまま学習の道筋になります。

1. 燃料の分析と発熱量

元素分析と工業分析

分析 何を出すか 主な対象
元素分析 炭素・水素・窒素・硫黄などの含有率(%) 液体燃料・固体燃料
工業分析 水分・灰分・揮発分を測り、残りを固定炭素とする 固体燃料(石炭など)
成分分析 含まれる成分ガスの容積% 気体燃料

「元素は元素記号、工業は水分・灰分・揮発分・固定炭素」と切り分けます。 工業分析は固体燃料のための分析で、液体燃料には使いません。

高発熱量と低発熱量

名前 内容
高発熱量(総発熱量) 燃焼で生じた水蒸気の潜熱を含む発熱量
低発熱量(真発熱量) 水蒸気の潜熱を差し引いた発熱量

差にあたるのは、燃料中の水素が燃えてできた水と、もともと含まれていた水分が 水蒸気になるのに使われた熱です。 実際のボイラーでは排ガスは水蒸気のまま煙突から出ていくので、 その潜熱は回収できません。したがって、

  • 高発熱量 > 低発熱量
  • 差を生むのは水素と水分
  • 水素を多く含む燃料ほど、両者の差が大きい

という関係になります。

2. 重油の性質

重油はいくつかの種類に分かれ、粘度の低いものから順にA重油・B重油・C重油と呼ばれます。 性質は互いに独立ではなく、ひとつながりに連動しています。

性質 粘度が高い重油(C重油側)ほど
比重 大きい
粘度 高い
引火点 高い
残留炭素分 多い
発熱量(単位質量あたり) 小さい
水分・スラッジ 多くなりやすい
流動点 高い(低温で固まりやすい)

なぜ連動するのか

重い(比重が大きい)重油ほど、分子の大きい成分が多く、水素の割合が相対的に少ない燃料です。 水素は炭素より単位質量あたりの発熱量が大きいので、 重い燃料ほど単位質量あたりの発熱量は小さくなります。 同時に、大きな分子は流れにくく(粘度が高い)、蒸発しにくく(引火点が高い)、 燃え残りやすい(残留炭素分が多い)——という性質が芋づる式に出てきます。

**「重い=ねばい=燃えにくい=発熱量は小さめ」**と一本で覚えます。

重油を扱ううえでの障害

障害 仕組み
低温腐食 重油中の硫黄分が燃えて硫黄酸化物になり、水と結びついて硫酸になる。排ガス温度が露点より下がる煙道や空気予熱器の低温部で凝縮し、金属を腐食させる
高温腐食 重油中のバナジウムなどの灰分が、過熱器など高温の部分に付着して金属を侵す
流動性の低下 流動点が高い重油は低温で固まる。油タンクや配管の加熱・保温が必要
スラッジ・水分 ストレーナの詰まり、噴霧不良、消火の原因になる

低温腐食の対策は「排ガス温度を露点より下げない」こと、高温腐食の対策は「付着させない・温度を上げすぎない」こと。 どちらも温度の話なので、名前と対策が一致します。 なお重油を加熱しすぎると、バーナの手前で油が気化して噴霧が不安定になるという別の害が出ます。 「加熱すればするほどよい」ではありません。

3. 理論空気量と空気比

定義

用語 意味
理論空気量(A₀) 燃料を完全燃焼させるのに理論上必要な最小の空気量
実際空気量(A) 実際に送り込む空気量
空気比(m) m = A ÷ A₀。実際空気量が理論空気量の何倍か

実際には燃料と空気が完全には混ざりきらないので、 空気比は必ず1より大きくなります(m > 1)。 理論空気量を超えて余分に入れた空気を過剰空気といいます。

空気比が大きすぎても小さすぎてもいけない

空気比 起きること
小さすぎる(空気不足) 不完全燃焼。一酸化炭素とすすが発生し、未燃分による損失が出る。ばい煙も増える
大きすぎる(空気過剰) 余分な空気を温めて煙突から捨てることになり、排ガスによる熱損失が増える。炉内温度が下がる。空気中の窒素・酸素が増えることで窒素酸化物や低温腐食にも不利

つまり空気比には、損失の合計が最小になるちょうどよい範囲があります。 この「両側に損がある」構図が出題の核心です。

燃料の状態と空気比の大小

燃料 必要な空気比
気体燃料 小さくてよい
液体燃料 中間
固体燃料 大きく必要

理由は混ざりやすさです。 気体燃料は空気とそのまま混ざるので、理論空気量に近い量で燃え切ります。 液体燃料は霧にしてから混ぜる手間があり、固体燃料は塊の表面からしか燃えないため、 行き渡らせるために余分な空気が要るのです。

「混ざりやすい順に、空気比は小さくてすむ」——気体 < 液体 < 固体、と覚えます。

4. 燃焼室とバーナ

燃焼室には、燃料と空気がよく混合すること、燃料が燃え切るだけの容積と滞留時間があること、 温度が着火と燃焼の継続に十分高く保たれること、炎が伝熱面やれんがに直接当たらないことが求められます。

油バーナの噴霧方式

重油は液体のままでは燃えません。霧にして表面積を増やす必要があります。 その「霧にする力」を何から得るかで方式が分かれます。

方式 霧にする力 特徴
圧力噴霧式 油そのものの圧力(ポンプで加圧してノズルから噴出させる) 構造が単純。油圧を下げると噴霧が悪くなるため、単体では負荷調整の幅(ターンダウン比)が狭い。戻り油形にすると調整幅が広がる
回転式(ロータリ式) 高速回転するカップの遠心力 油圧をあまり必要としない。調整幅が比較的広い
高圧気流式 高圧の蒸気または空気の流れ 霧化が良く、調整幅が広い。噴霧用の蒸気・空気が別に要る
低圧気流式 低圧の空気の流れ 比較的小容量向け
ガンタイプ 圧力噴霧式のバーナと送風機を一体にしたもの 小型で自動化しやすい

**「圧力でつぶす・遠心力で振り飛ばす・気流で引きちぎる」**の3つの原理に分けて覚えます。 そして共通の注意点は、噴霧をよくするには油の粘度を適正に下げる(加熱する)必要があることです。 粘度が高いままだと霧が粗くなり、不完全燃焼とすすの原因になります。

5. 通風

通風は、燃焼用の空気を送り込み、燃焼ガスを煙突へ導く流れのことです。

方式 仕組み 炉内の圧力
自然通風 煙突の中の高温ガスと外気の密度差(煙突の高さと温度差)だけで通風する ほぼ大気圧
押込通風 押込ファンで空気を炉へ押し込む 大気圧より高い(正圧)
誘引通風 煙道または煙突入口の誘引ファンで燃焼ガスを吸い出す 大気圧より低い(負圧)
平衡通風 押込ファンと誘引ファンを両方使う 炉内をほぼ大気圧に保てる

方式ごとの得失も、この仕組みから導けます。

  • 自然通風は動力が不要だが、通風力が弱く、外気温や天候に左右される
  • 押込通風は空気が冷えた状態でファンを通るのでファンの傷みが少ないが、 炉内が正圧になるため、すきまから燃焼ガスが漏れ出すおそれがある
  • 誘引通風高温で腐食性のある燃焼ガスを吸うためファンが傷みやすいが、炉内は負圧で漏れ出しにくい
  • 平衡通風は炉内圧を調整でき大容量に向くが、ファンが2台要るぶん動力と設備が増える

「押し込めば正圧・吸い出せば負圧・両方なら大気圧近く」—— この対応さえ作れば、漏れの向きもファンの傷み方も自動的に説明できます。

なお、通風力の調整にはダンパを使います。構造規格は 「手動ダンパの操作装置は、取扱いが容易な位置に設けなければならない」(80条)と定めています。

まとめ

  1. 高発熱量 > 低発熱量。差は水素と水分による水蒸気の潜熱
  2. 重油は「重い=ねばい=引火点が高い=残留炭素が多い=単位質量あたりの発熱量は小さい
  3. 低温腐食は硫黄分、高温腐食はバナジウムなどの灰分。どちらも温度で説明できる
  4. 空気比 m = 実際空気量 ÷ 理論空気量 > 1。小さすぎれば不完全燃焼、大きすぎれば排ガス損失
  5. 空気比の大小は混ざりやすさの順。気体 < 液体 < 固体
  6. 通風は「押込=正圧、誘引=負圧、平衡=ほぼ大気圧